2005年に日本デビューを果たし、2020年に15周年を迎える東方神起。現在、4度目となる全国5大ドームツアー「東方神起 LIVE TOUR 2019 〜XV〜」を開催している。

東方神起のライブツアーの演出を手掛けているのは、SAM。ダンス&ボーカルグループ・TRFのメンバーでありながら、さまざまなアーティストの振り付けやライブの演出を手掛けるなど、ダンサーを職業とした先駆者のひとりである。

「こういうふうにSAMさんと話すのは初めて!」と、緊張気味で登場したのは東方神起のバックアップダンサーを務めるダンサーのSONNYとACHI。SAMは、ふたりにとって大先輩であり、出演するライブの演出家でもある。

長年、東方神起のステージを作り、ライブに花を添える3人が明かす、東方神起の知られざる素顔とは? これまでの東方神起との歩みを振り返りながら、こだわり抜いたライブの演出やステージの裏側についても語ってもらった。

撮影/TMFM 取材/渡部真咲 文/Yacheemi
 

ダンサーも集大成。15周年のステージに花を添えたい

▲「東方神起 LIVE TOUR 2018 ~TOMORROW~」
以前、SONNYさんにはインタビューさせていただきましたが、SAMさんとACHIさんは初めてですね。おふたりはいつから東方神起のお仕事をされていますか?
SAM 「東方神起 3rd LIVE TOUR 2008 ~T~」(2008年)からで、このときはアリーナツアーでした。
ACHI 「東方神起 LIVE TOUR 2012 ~TONE~」(2012年)からです。
ということは、SONNYさんがいちばん長く東方神起のおふたりとお仕事されているんですね。
SONNY そうなりますね! 「東方神起 1st LIVE TOUR 2006~Heart,Mind and Soul~」(2006年)からで、ライブハウスでのツアーだったんです。その中でもZepp公演だけダンサーを起用していたので、2~3公演くらいで、しかも踊る楽曲も3曲くらいでした。
それが15年経った今では5大ドームツアーを開催するまでになったんですね!
SONNY スゴいですよね。当時、メンバーは「5年でドームへ行くぞ!」と意気込んでいたんですよ。そうしたら、デビュー4年目に東京ドームでライブをやりましたね。
▲左から、ACHI、SAM、SONNY。
スゴい! ツアータイトルが“XV”と15周年に絡めていますが、記念すべきツアーに対して、皆さんが特別に意識したことはありますか?
SONNY いい意味でいつもと変わらないですね。ただ、今回はダンサーが15人と今まででいちばん多いんです。去年参加できなかったACHIが戻って来てくれたので、ダンサーも集大成としてステージに花を添えようと意識しました。
SAM そこは考えましたね。15周年のステージにはACHIを入れなきゃ、と思っていて。
昨年の「東方神起 LIVE TOUR 2018 〜TOMORROW〜」ではACHIさんが不在だったことで、SNSでも「ACHIさんがいない!」などといったファンの方々の反応を多く見掛けました。
ACHI ダンサーの名前まで知っていただけてありがたいですね。今回のツアーでは「ただいま!」という気持ちがあります。だから、ファンの方に温かく迎えてもらえて、戻ってこられてよかったと本当に思いましたね。
SAM 制作側に、ACHIを入れられないか相談したら即答でOKが出て(笑)。ちょうどスケジュールも合ったのでよかったです。
ACHI SAMさんのおかげです(笑)。
ACHIさんは昨年のツアーを客席からご覧になったそうですね。
ACHI そうです。ダンサーって、なかなか自分が立っていたステージを客席から見る機会がないので、いい経験になりました。
SONNY 自分は東方神起のライブをお客さん目線で見れたことがないので、すごくうらやましい(笑)。
SAM 「あそこに自分がいたかもしれない」っていう目線で見られるよね。
ACHI そうですね。こういうのやりたかったなって嫉妬しました(笑)。客観的に見ることで、東方神起ダンサーズのいいところや「こうしたらもっとよくなるな」という発見もありました。
SAM え、そのダメ出しを聞きたい!
ACHI え!(笑)
SONNY ACHIの経験が今年の現場ですごく活きていますよ! リハーサルの時点から即座に気がついてくれたことを遠慮せずに言ってくれるし、去年のツアーでは、ACHIがいなくて欠けていた部分を感じていたので助かっています。
SAM ACHIはリハーサルでも引っ張ってくれるポジションですからね。
ACHI 思ったことをすぐ言っちゃうタイプなんですよね。たまに言い過ぎて反省するときもあります(笑)。でも、ダンサー同士のチームワークができているので、みんなが意見を受け入れてくれて前進できるんです。

ダンサーの背中を押した、東方神起の言葉

ダンサーに対して、SAMさんからアドバイスをされることはありますか?
SAM 3年前くらいまでは振り付けについて細かく注意していたけど、今年は例年に比べて少ないかもしれない。

あとは、大きいステージになるほど大事なのがポジショニング。ほんのちょっとのズレで、カッコいいものがそうでなくなってしまうんですよ。でも、今年は全然うるさく言ってないし、東方神起ダンサーズはスゴいですよ。
SONNY 長年一緒にやっているから…というのは確実にありますね。何も言われなくても「SAMさんはこういうふうにやってほしいだろうな」って汲み取っている気がします。
SAM うん。普通は長年同じチームだとなぁなぁになっていくけど、東方神起のチームは常に新しいことに挑戦するから色褪せない。ツアーがないときでも、ダンサーは個々の活動の中でダンス力を上げているし、向上する一方ですね。
ACHI 東方神起と信頼し合える関係だからこそ、こっちもベストパフォーマンスで返さないといけないな、と。

ダンサーは、ふたりだけでは届けきれないところを広げる“空間”の役割だと思うんです。大きいステージとなるととくにそうですね。前に、ふたりが「ダンサーを含めて東方神起です」と言ってくれたことがあって、そういう言葉は自分たちの背中を押してくれていますね。
SONNY 自分たちとしては、「あまりトゥーマッチにならないようにしなきゃ」と思ってしまうんですが、「自分のステージだと思って踊ってください。自分たちもこれくらいやるので!」と、よく言ってくれるので、心置きなく全力を出すことができます。バックアップだから一歩引いて…じゃなく、ダンサー目線に立ってアドバイスしてくれてうれしいです。
ACHI 自分のステージのように気持ちを込めながらこれほど大きいステージに立てることは、バックアップダンサーという仕事の醍醐味ですよね。もちろん主役はふたりなので、出過ぎず、でも引っ込み過ぎず。
SAM それは大事。バランスを取れるメンバーだから、みんないい感じでギリギリの存在感を出しています。

ドームにいる誰もが楽しめる、ライブ演出の秘密

ツアーでの演出はどういった流れで決まっていくのでしょうか?
SAM 打ち合わせの時点で、すでにステージのセットがある程度決まっていますね。自分が動き始めるのはそれからで、演出が固まってきたらダンサーチームとリハーサルをして、東方神起と合流します。楽曲それぞれに出演するダンサーはどうやって決めてる?
SONNY 制作側でざっくりとメンバーを決めてもらって、その一覧が書かれた紙を渡されるんです。それを見ながらダンサー同士で相談して決めていますね。
ACHI その紙を見るとき、通知表を見るような感じでちょっとドキドキするんですよね(笑)。自分はどの楽曲に出るのかなって。
SAM そうだったんだ! ずっとどうやって決めているのか気になってたんですよね(笑)。
スッキリしましたね(笑)。では、とくにダンサーについてSAMさんが決めていることはないんですね。
SAM そうですね。出番は制作側やダンサー、立ち位置は振付師に任せています。でも、今回はどうしてもACHIをセンターにしたい楽曲があって、そこは自分からお願いしました(笑)。
東方神起のおふたりと演出や振り付けについてやりとりはされますか?
SAM 基本的に任せてくれています。「これとこれ、どっちがいいかな?」と相談するときがあるんですけど、しっかりとした答えを返してくれますね。ビジョンがはっきり見えているんだと思います。
ACHI 細かい確認は日頃からしていますが、あうんの呼吸で自然と形になっている気がします。
SONNY 本人たちから直接的な言葉で強い要望がないぶん、しっかりこちら側から完成したものを提示しないといけないと思っていますね。
▲「東方神起 LIVE TOUR 2018 ~TOMORROW~」
東方神起のライブは、ステージに近い席から遠い席まで、どこから見ても楽しめるのが印象的ですが、工夫されていることはありますか?
SAM ドーム会場のときは、いかにして全体のお客さんに届けるか、ということをとくに考えます。まんべんなくステージを使えているかパーセンテージを出しながら、バランスを整えています。ドーム会場だと、細かすぎることをやっても届かないし、演出の難易度が高いんですよね。
毎年ツアーがあると、年々プレッシャーもスゴそうですね。
SONNY ちょうどさっきダンサーのみんなと「毎年『去年よりよかった』と言っていただけることってスゴいよね」って話していたところです。
SAM 去年は新しい演出をたくさんやって、めちゃくちゃいいツアーだったんですよ。だから今年はすごくプレッシャーがありました。
東方神起 LIVE TOUR 〜Begin Again〜 Special Edition in NISSAN STADIUM
今回のツアーでは、どんなことを意識して演出しましたか?
SAM 今回は、ふたりがガムシャラに踊らなくてもいいライブを作りたかったんですよ。というのも、「東方神起 LIVE TOUR 〜Begin Again〜 Special Edition in NISSAN STADIUM」(2018年)で過酷なことをさせてしまって。日産スタジアムは屋外なんですけど、雨が降る中で公演をしたこともありましたし。今回は、彼らのペース配分がうまくできているのかな。もちろん歌っているだけでも圧が出るから、見ている人はそれを感じないと思います(笑)。
ACHI SAMさんの演出は、ダンスに関するものだけに特化しているわけではないんですよね。たとえば、バラード曲で、ふたりがステージの真ん中にポツンと立っているときの、照明や場所の使い方も計算して作り上げられていて、まるでふたりとお客さんだけの空間みたいにしている。現役で活動されているダンサーのSAMさんが、ダンス曲以外の空気感も演出しているのは本当にスゴいですね。
SAM よく見てますね~(笑)。じつは今年、ACHIには「ダンサーをやらないで演出のアシスタントやらない?」って誘ったんですよ。でも、断られました(笑)。
ACHI 「まだ踊りたいです」って(笑)。
そんな話があったんですね! ACHIさんは、演出に興味はあったんですか?
ACHI ダンサーのネクストステップとして、踊るだけじゃない目線の持ち方は大事だな、と思っています。自分が踊るときにも活かせるし、今はいろいろなところをキョロキョロして観察していますね。

振り付けではなく楽曲に込められた思いを受け継いでいく

東方神起
東方神起のおふたりに出会った頃から感じる変化と、変わらないと思うことはありますか?
SAM 変化で言うと、とくに今年はふたりの成長がスゴいですよ。この1年ですごく成長しました。何だろうな…ふたりの気迫の表れなのかな。ステージの魅せ方、お客さんに対するサービス精神、スタッフに対する気配り…全部が噛み合っている気がする。15年目にして、完成されちゃいましたね(笑)。だから、今回のツアーでは東方神起ふたりへのダメ出しがひとつもないんです!
ACHI 自分の出番以外のときにモニターで見ていると、ふたりのフルアウトっぷりに驚いています。それがバラードでも踊っているときでも、伝えようという気持ちがモニター越しでも伝わってきますね。
SONNY クオリティがスゴいんですよね。長年一緒にステージに立っていますが、ふたりの姿に僕らも毎回圧倒されてしまうんですよ。

それに、毎年新しい偉業を成し遂げていくところが本当にスゴい! 会場の規模も大きくなっているように、平行線を辿らずに1個ずつ積み重ねていく姿勢が毎回のツアーに表れていますね。それを15年間続けているのは、並々ならぬ努力だと思います。
SONNYさんは以前のインタビューで「東方神起の現場に来ると初心に戻れる」とおっしゃっていましたが、偉業を成し遂げていく中でもそう感じるんですね。
SONNY 出会ったときと変わらず、リハーサルの時点から全力でパフォーマンスする姿はアーティストの鑑だなと思うし、その意思が周りにも伝わっていくことで自分たちもビシッと背筋が伸びる。そうしてお互いに厳しく完璧なステージを求め続けていけるんだと思います。
ACHI そういう厳しい面もありつつ、現場ではダンサーやスタッフにもよく声を掛けてくれます。いつのまにかダンサーの輪に交ざって一緒にストレッチをすることもあって、飾らない自然体なふたりの空気感が自分たちにもいいマインドを与えてくれています。だから、お互いに距離を感じることなく、いいステージを作るために意見交換ができるし、わからないことがあったら気兼ねなく聞くことができる。これも最初に会ったときから変わらないですね。
ダンサーから見て、東方神起の現場ならではだな、と思う部分はありますか?
SONNY バリバリと精力的に活動している若い世代のダンサーと一緒のステージに立てるのも、東方神起ならではですね。
ACHI メンバー15人がちゃんと各世代に分かれているのも珍しいですよね。
SAM たしかに。新しいダンサーを入れるときには必ずオーディションをしていて、フレッシュな若手が入りやすい現場ですね。
ACHI メンバーによって参加し始めた時期が違うから、それぞれの立場での思いがあります。「オーディションで過酷な状況を勝ち抜いてステージに立っている」ということも、気持ちを強めている理由かもしれないです。本当にダンサー冥利に尽きますね。
SONNY 自分が初めて現場で習った楽曲はとくに思い入れが強いから、それぞれの楽曲で強いイメージを持っているダンサーがいるよね。俺だったら、「デビュー当時からの楽曲はこういう雰囲気でやりたい!」とか。そういう意見をみんなで言い合っています。
ACHI 東方神起ふたりから楽曲にどんな思いが込められているのかも聞いているので、振り付けだけでなくそういう部分でも楽曲に対する思い入れが強いですね。ダンサーたちは、ふたりの楽曲を自分ごとのように語り合える熱さがある。だから「東方神起ダンサーズ」っていう、1個のチーム感が出るんだと思います。
最後に、今回のツアーの見どころを教えてください。
ACHI 全部ですね! いろいろなところに「15」というキーワードが散りばめられているので、隅から隅まで注意深く見てほしいです(笑)。1回だけでなく2回見にきても楽しめると思います!
SONNY 今回のセットリストは、デビュー当時の楽曲から最新曲まで、ひとつのコンピレーションアルバムのようになっているので15周年の集大成が味わえると思います!
SAM SNSでネタバレしているかもしれないけど、来てくれる人はそれを見ずに、新鮮な気持ちで楽しんでほしいですね。最近ファンになった人たちは、ぜひ過去のすべての楽曲も予習してきてくださるとさらに楽しめると思います!
 
SAM(サム)
1962年1月13日生まれ。埼玉県出身。B型。10代でディスコダンス、ブレイクダンスに出会い、アメリカ・ニューヨークへ渡り、バレエ、JAZZダンスなどの基礎を修得。TRFをはじめ、東方神起やV6、浜崎あゆみBoA郷ひろみなど、多数のアーティストの振り付け、演出などを手掛けている。自らが主宰するダンススタジオ「SOUL AND MOTION」でレッスンも行っている。エクササイズDVD『EZ DO DANCERCIZE(イージー・ドゥ・ダンササイズ)』(2012年)は、ミリオンセールス突破の大ヒットとなる。2016年、一般社団法人ダレデモダンスを設立、代表理事に就任。
 
SONNY(サニー)
1979年1月23日生まれ。アメリカ出身。A型。ダンスチーム・PRIME TIME、SHOWGUNに所属。18歳まで生活をしていたアメリカ・サンフランシスコで培ったネイティヴな英語力と倍カルチャーから生まれるダンススタイルが魅力。東方神起やAK-69、ZEEBRA、AI、安室奈美恵BoAなど、多数のアーティストのバックアップダンサーや振り付けを担当。専門学校などでダンスと英語の講師を務めながら、同じくアメリカ育ちのバイリンガルダンサーであり妻のMAMIZO とともに、海外と日本をつなぐダンス留学プロジェクト「CULTURE JAM TOKYO」や、スタジオ「STUDIO CULTURE」の運営を行い、若手の育成にも力を入れている。
 
ACHI(アチ)
1982年1月25日生まれ。神奈川県出身。B型。ダンスチーム・stacks'として、大学生限定のダンスコンテスト「BIG BANG TOKYO」で優勝を果たす。2006年に結成したダンスチーム「Rockwilder」で都内を中心に活動する傍ら、東方神起w-inds.松下優也、AK-69、倖田來未などのバックアップダンサーを務める。ZEEBRA氏が発足させた「GRAND MASTER」に、ダンスチーム・SHOWGUNとして参加。Japanese HIPHOPを代表するダンサーとしても精力的に活動している。

CD情報

東方神起
NEW SINGLE『まなざし』
2020年1月22日リリース!


左からCD+PHOTOBOOK【初回限定豪華盤】、CD ONLY

CD+PHOTOBOOK【初回限定豪華盤】
¥2,000(税抜)
CD ONLY
¥900(税抜)
詳細はこちら https://toho-jp.net/news/detail.php?id=1079351

 
◆ライブ情報
東方神起 LIVE TOUR 2019 ~XV~』
12月21日(土)22日(日)大阪・京セラドーム大阪
2020年1月11日(土)~13日(月)愛知・ナゴヤドーム
2020年1月17日(土)~19日(月)大阪・京セラドーム大阪
※終了公演は割愛
詳細はこちら https://toho-jp.net/15th/xvtour/